腰痛のひとつである「腰部脊柱管狭窄症」は、腰の神経の通り道である脊柱管が狭くなることで、脚の痛みやしびれ、歩きにくさ、排尿障害などが起こる疾患です。
国内の患者数は約500万人と推計されており、高齢化に伴い今後も増加が見込まれます。しかし、手術への恐怖心から受診をためらい、市販薬や民間療法に頼る方が少なくありません。
「神経を手術で触ることで神経障害が怖い」「背中を大きく切るので術後に傷跡や痛みが残るのでは」という不安が根強いようです。
たしかに15年ほど前までは時間のかかる大きな切開を伴う手術が行なわれていましたが、現在は内視鏡やカテーテルを用いた、安全性の高い低侵襲な術式が確立され、術後の痛みも少なく入院日数も短縮しています。
軽度から中等度の腰部脊柱管狭窄症に対しては、先端が自在に曲がる構造のカテーテルを用いた「経仙骨的硬膜外神経癒着剥離術(TSCP)」を行なうことがあります。
これは背骨の一番下にある仙骨の穴(仙骨裂孔)からカテーテルを挿入し、脊柱管内部に薬剤を注入するとともに、カテーテルで直接癒着をはがして症状の改善が期待される治療です。
局所麻酔下で3~4ミリ程度の切開で済み、治療はX線透視下で行なうため安全性が高く、20分程度で終了します。
保存療法で改善しない軽症から中等症の患者さんに加え、全身麻酔が難しい高齢者や持病のある方にも適した治療法であり、2018年から保険適用となっています。
一方、重症化した腰部脊柱管狭窄症では、脚の痛みやしびれに加え、歩行障害や排尿障害などさまざまな症状が現われます。さらに、鎮痛剤の効果も十分に得られなくなり、日常生活に大きな支障をきたします。
現在は、脊柱管狭窄症に対しても内視鏡を用いた低侵襲除圧術が普及しており、小さな傷で神経の圧迫を解除できるようになっています。
腰痛を単なる「我慢するもの」と捉えず、まずは専門医のもとで原因を正しく診断することが重要です。そして、最新の知見に基づき、ご自身に適した治療法を選択することが、健康な生活を取り戻す第一歩となります。